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40. 刺繍工房 |
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41. 刺繍製作風景 |
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42. 糸切りに使う磁器片 |
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昼食のため、いったんハノイへ戻り、午後からトゥーロンティン村へ向かいました。 トゥーロンティンは基本的には農村であり、田園地帯の中に20〜30件の家屋がひとかたまりにまとまっています。日本の現代の農村に見られる、まばらな風景とはかなり趣きが異なっていました。
あいにく訪れた日は、村総出で田圃の雑草取りに出かけており、刺繍の作業はほんの数人しか行っていないといいます。なんとものどかな話しですが、刺繍工房を経営しているという兄弟の案内で見学することとなりました。
専門外のことなので詳しく訊ねなかったのですが、刺繍は村内の何軒かの家で行われており、一軒につき数人の刺し子がいるようでした。(写真40)
この村で製作しているのは、都市のお土産店でよく見かける額絵で、ベトナムの風景画や草花などの静物画が多いようです。モチーフは写真やグラビアから構図を起こしていて、オリジナリティには乏しいのですが、仕事ぶりは丁寧でした。(写真41)
個人的に面白かったのは、糸を切るのに磁器の陶片を使っていたことです。理由を訊ねると、使い馴れているからとの実にシンプルな返事が返ってきました。(写真42)
トゥーロンティンでは、日本やフランスとのビジネスはまだ行っていないようですが、今後のベトナムの経済発展に伴い、やがては海外に向けた製品を作るようになるのかもしれないという予感を持たせる村でした。
■ベトナムの旅での大きな収穫
以上で、ベトナム研修旅行の日程も無事に終了となりましたが、今回もいろいろと収穫があり、また日頃の勉強不足を痛感する旅でもありました。
なんといっても、これまで文献等で紹介されることのなかった上手の古伊万里を、数多く見られたのは幸運であったし驚きでもありました。これらがどのような経路でベトナムにもたらされたのか、今後できるだけ調べて見たいと思います。
また、バッチャンの変貌にもびっくりさせられました。自分と同じ業種の変わりようというのは、ガイドブックなどで読むベトナム経済の成長ぶりを、リアルに伝えてくれるものでした。
ベトナム戦争が終わって25年、旅行者として見る風景や人々の暮らしに、その影響はほとんど感じられません。
「ベトナム人は昔のことを根に持たない人種だ」とクン氏が言っていましたが、その言葉はかつて中国、フランス、日本、アメリカとこれまで多くの国々に翻弄されながらも、最後には今日の独立をかち取ったベトナムの人々の自信と、これからの希望を代弁しているようでした。(文・写真 金子昌司)
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