中国白磁の旅
■ベトナムは漢字文化圏!を再認識 4日目
ハノイ歴史博物館
29. ハノイ歴史博物館
「延宝年製」銘
30. 「元禄年製」銘
古伊万里紀年銘入り花入と緑釉龍陽刻文 燭台
31. 安南 染付牡丹唐草 長頸瓶
染付の紀年銘
32. 染付の紀年銘
陰刻の紀年銘
33. 陰刻の紀年銘
陰刻の紀年銘
34. 陰刻の紀年銘
ダナンまで戻り、午前の飛行機でハノイへ向かいました。午後2時にハノイ歴史博物館見学。(写真29)学芸課長を勤めるDr.Nguyen Dinh Chien氏の案内で館内を見学しました。15世紀以前の展示スペースは工事中で見学不可。氏はバッチャンを始めとするベトナム陶磁研究の専門家で、昨年、15世紀〜19世紀にかけての紀年銘のあるベトナム陶磁を集めた本を出しており、今回はそれに準じた解説を行って頂きました。

古伊万里では紀年の入った焼き物は大きく二通りに分類できます。 ひとつは製作者が意図して入れるもので、多くは製作された年号が高台内に入ります。「承応二歳(1653年)」や「延宝年製」「元禄年製」がそれにあたり、古伊万里によくある「大明成化年製」など、中国の年号を写したものの派生と見ることもできます。(写真30)もう一方は寺社等へ奉納するために製作依頼者が紀年を入れさせるものです。奉納者の氏名や住所、年月日までが細かく記され、器種も香炉等の仏器や置物といった特殊なものが多くあります。

我々がよく知る紀年銘のあるベトナム陶磁は、以前源グループの研修で訪れたトルコ・イスタンブールのトプカプ宮殿所蔵の大和八年(1450年)銘がある染付牡丹唐草 長頸瓶がまずあげられます。 この瓶は、中国染付の影響を色濃く受けたもので技術的にも素晴らしく、数あるベトナム陶磁の中の白眉ともいわれます。(写真31)

残念ながらハノイ歴史博物館では、これに匹敵するような名品には巡り会えなかったのですが、おそらくは仏教寺院に奉納されたと思われる、大ぶりな燭台、香炉、瓶が多数展示してありました。 取り上げられているモチーフは霊獣の長といわれる龍が圧倒的に多く、技法としては染付だけのものや、主文様である龍をレリーフで別作りにして貼り付け(貼花文と呼ばれる)、周囲の運気文や蓮弁文等を染付で表したもの、モチーフすべてを陽刻で表し緑釉等を施したものに大別できます。(写真32.33.34)

また、その他では鳳凰、麒麟、獅子といった中国原産の瑞獣が従文様として取り上げられていますが、これも奉納品である事と関連していると思われます。

紀年銘については、染付で筆書きされたものと、施釉後にヘラまたは釘状の道具で陰刻したものがあります。当然染付のものは文字を書き込むスペースが最初から取られその中にきっちり収まっています。陰刻の方も彫り込むスペースは一応取られていますが、文字数が多くて収まらないものは、文様部分にまではみ出して彫られています。主文様をレリーフで表したものに印刻銘が多いのは、おそらく主文様に文字が掛かるのを避けるためであろうと考えると、染付銘は今日でいうフルオーダー、印刻銘はセミオーダーくらいの違いがあったのではと思われます。 そしてなにより驚いたのは、記されている漢字が達筆なことでした。かつてはベトナムも漢字文化圏であったことを新ためて認識させられました。

博物館を辞した後、旧市街の「36通り」へ出かけました。土産物や工芸品などの店が、通りをはさんでひしめきあっています。この頃になるとオートバイの川のような道路を渡るのも、だいぶうまくなってきました。

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ハノイバッチャン-1-バッチャン-2-
器に学ぶ世界の古窯めぐりベトナム・伝世古伊万里の旅