施釉

よどみなく釉を浸し掛ける手わざ

タイトル
施釉・乾燥
再生時間
2分22秒
映像内容
施釉、乾燥、仕上げ

長い年月、踏み固められてでこぼこした細工場の土間は、一種独特の味わいがあります。施釉はその土間の真ん中が作業場。下絵付師が丹誠込め、呉須で文様を描いた器は、肌色も発色もまだまだ磁器のもつ透明感はありません。

その器には釉薬(上薬)が、一点一点慎重にかけられます。なかでも古伊万里風の器は伝統を重んじて、源右衞門窯独自の柞灰釉(いすばいゆう)を用いています。この特別な釉薬は、江戸時代から有田皿山の「上手もの」に用いられましたが、現在では高価なため一般には使われていません。

乳白色の柞灰釉がたっぷり入った容器のなかに、器が次から次へと浸けられていきます。厚くなく薄くなく、見事な手さばきで器は釉でおおわれます。

その瞬間、下絵付師たちが入念に描いた文様は跡形もなく消え、炎の洗礼を受けて釉が透明なガラス膜となる「本窯」の日まで、姿を隠してしまうのです。

文様の消えた器は、ふたたび乾燥させ、頃合をはかって仕上げ作業が加えられます。これまでいったい何人の手を経たのでしょうか?検査場でもまた実に入念に、釉薬の状態がチェックされ削りがかけられます。

用語のご説明

柞灰釉(いすばいゆう)
マンサク科の常緑樹「柞の木」の皮でつくった木灰。上絵具の盛り上げに最適、古伊万里の味わいが出ます。

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