下絵付け

流麗な線に大胆な濃み

タイトル
下絵付け
再生時間
4分21秒
映像内容
型打ち、筋引き、染付描き、染付濃、乾燥

ろくろ師によって、器のカタチとなった胎土(つち)は、天日で乾され、素焼きをへて、下絵付け師の手に渡されます。

まず最初は仲立紙を使った「型打ち」から「筋引き」へ。つづいて「染付け描き」に入ります。使用するのはとても細筆一本。呉須を含んだ細い筆が走り、章魚唐草や梅文様が鮮かに姿を現わします。

一筆間違えばろくろ師の苦心は水の泡。しかし、半敷(はんじき)の上にどっかりと腰を据え、馬(うま)に左肘を乗せた下絵付け師の筆の動きは流れるように、複雑な文様を一気呵成(いっきかせい)に描きあげていきます。

やわらかな、赤子の肌を思わせる生地の表面にしっとりのびる呉須の線。5分、10分、15分。時は止まり、音のない、しかし流麗な筆の動きだけが空間を支配し、下絵付け師一人ひとりの周囲に小宇宙を形づくります。

線描きのあとは「染付濃(そめつけだみ)」にうつります。地の部分を塗りつぶす濃は、根気のいる作業で、有田では、古くから女性が受けもちます。ひとにぎり半はあろうかという太い濃み筆に、たっぷりと呉須を含ませ、スポイトの要領で絞り出しながら地を塗りつぶします。筆先の素材は鹿の尾の長毛。呉須が流れ出ないように、しかも濃み足を長く引かねばならず、繊細でいて思い切りよさが要求されます。

有田では昔から濃みは、ムラなく濃むのを最上としてきました。しかし、あえて濃みムラを生かすことで、源右衛門窯独自の現代的で生き生きした感覚の濃みを創り出しています。

用語のご説明

呉須(ごす)
染付けに使う顔料。美しいブルーを発色させるため、昔ながらのコバルト土を精製し、茶の煮出し汁を使って乳鉢で磨細して使います。
馬(うま)、半敷(はんじき)
「馬」は絵付け師用の小机、「半敷」は小畳と座ぶとん、個人専用で、江戸の昔からこの姿勢が一番作業しやすいといいます。

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