河南博物館
■宋時代の完成された磁器の美に感動 5日目
河南省博物院
河南省博物院
唐三彩三足壺
唐三彩三足壺
磁州窯 白地鉄絵唐草文 梅瓶
磁州窯
白地鉄絵唐草文 梅瓶
邯鄲より河南省の省都鄭州へ。およそ250kmの距離で午前中には到着予定でしたが、途中で交通事故に遭遇し大きく遅れました。

午後遅く「河南博物院」着。新築の建物は、規模と内容で中国国内でも最高クラスです。 河南一帯はかつて中原と呼ばれ、『中原を制する者が中国を制す』とのたとえの通り、黄河が運ぶ土が肥沃で広大な耕作地をもたらしたところ。位置的に見れば交通要衝の地でもあったため、古代より多くの国がこの土地をめぐって存亡を繰り返してきました。商(殷)時代の青銅器の多くがこのあたりで製作されたとの話を聞きました。

また、唐時代に墳墓の副葬品として造られた唐三彩の名品の多くは、河南省鞏県窯で焼かれたといわれ、唐白磁も製作しています。 周知のように、唐三彩の青色の釉薬にはコバルトを呈色材として使用しますが、これは染付け(青花)顔料にも含まれる素材です。

世界の染付け磁器のルーツは江西省景徳鎮といわれ、現在確認されている最古の紀年銘は元末期の至正11年(1351)。近年の研究では、その起源は唐時代にまで遡るのではとの意見もあり、その可能性を持つ産地のひとつが河南省「鞏県窯」で、今後の研究が待たれるところです。

そして、なんといっても北宋の都、開封が置かれたのは現在の鄭州の近くであり、その時代の名窯といわれ、今日でも評価の高い汝官窯、釣窯、定窯、耀州窯や、民窯として膨大な生産量を誇った磁州窯などは、開封を取り巻くように点在しています。 個人的にこれまでは、どうしても元時代以降の景徳鎮磁器ばかりに関心があり、それ以前の中国陶磁には眼が向きませんでした。しかし、この何年か、中国各地の窯跡や産地、博物館を巡るうちに、元以前、特に宋時代の焼き物に中国陶磁の一つの完成された美を感じるようになりました。

この時代に、各産地で確立された多くの技法や卓越した技術などが景徳鎮に影響を与え、染付けや五彩手磁器として華開き、朝鮮半島を経由しあるいは直接に有田へもたらされた事を思うと、今回訪れた「定窯」や「磁州窯」と有田との距離もそれ程遠いものではないこと。そして、もの造りの姿勢や美意識といった内面的な事や、そこから産み出される形状、文様等、学ぶべきところは多い...というのが、河南省博物院の焼き物を見学しての感想です。
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器に学ぶ世界の古窯めぐり中国・白磁の旅